萌魔導士アキバトロン(19)

ヘッドギアの戦闘状態を表すLEDランプを明滅させながら、Liloサブマシンガンを黒人形にありったけ撃ち込むが、あまり効いていない。さっき跳ね飛ばされたモップが折れてしまった萌は、取り囲まれた白人形たちを前にしてハンガーを取り出すと、まるでヌンチャクのように振り回して蹴散らし、遠くの敵にはブーメランのように投げてなぎ倒す。その間、ただ逃げ回って彼女たちの戦いを眺めるしかない志朗は、苛立ったように聞く。
「俺には何ができる」
「何もしなくて結構です、志朗」
「なぜ!」
ヘッドギアから流れる音声は、冷気のように頬を撫でる。
「あなたはサーバ役として既に機能しています」
LEDが規則正しく点滅する。キュンキュンという微かな音が聞こえる。
「どういうことだ?」
詳細は後で、とだけ告げたLiloはまた銃撃をはじめる。俺が鯖になっている? 志朗は納得がいかない様子だった。二人が黒人形に苦戦しているのを見ればなおさらだ。目に見えて落ち着かない志朗をLiloは横目で眺めながらつぶやく。
「いったん現実に落ちることができれば」
「眼を覚ませばいいのか」
ヘッドギアごと頷く。だが意識的に目覚めた経験などあまりない。どうやったらいいのか分からず、うろたえる。
「……仕様がない」
Liloはハンドガンを志朗に突きつける。
「ちょ、おま」
夢の中とはいえ戦いによって後遺症が残るかもしれないといったのはお前ではないか、志朗はそんな意味のことを言おうとした。だが、言葉になる前に視界が白くなり、彼はどこかのベッドで目覚めた。


   (続)